院長ブログ
2015年6月15日 月曜日
閉塞性睡眠時無呼吸へのCPAP vs. O2の血圧への効果
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、高血圧、炎症及び心血管リスクの増大に関連する。間欠性低酸素血症が、睡眠時無呼吸の心血管系疾患発症の根底にある可能性がある。このため、Gottliebらは、心血管疾患リスクをもったOSA患者への治療として、夜間CPAPと夜間酸素療法の血圧への比較検討を行った。318人のAHI15-50回/時間の心血管系疾患リスクをもつ症例を対象とし、コントロール群、CPAP群と夜間酸素療法群の3群に無作為割付を行い、12週間後の血圧変化を観察した。コントロール群と比較して、夜間低酸素の是正は、CPAP群および酸素投与群の両群とも改善しており、両治療機器の夜間使用時間は、CPAPで3.5時間、酸素投与で4.8時間と酸素投与群で有意に長かった。 結果として、血圧に関して、夜間酸素投与群はコントロール群と著変なかったが、CPAP群はコントロール群や夜間酸素投与群と比較し、収縮期血圧2-3mmHgと有意な血圧低下を認めた。
ゆみのコメント:
心血管系疾患またはそのリスクをもつ患者は、OSAの日中の眠気などの症状が乏しいことが知られており、その治療となるCPAPコンプライアンスが不良となることがみられる。また、OSAが高血圧や心血管系疾患のリスクとなる要因として、その病態にある間欠的低酸素が重要な因子となっている可能性がある。これらより、CPAP以外の治療、特に夜間酸素投与が、OSA自体の改善、および血圧や心血管系疾患へも効果があれば臨床上重要な意義があると考えられた。本研究では、この点に介入し、心血管系リスクをもつOSAに対して、CPAP治療と酸素治療の血圧への比較検討を行った。結果として、酸素投与はコントロール群と比較して、血圧への効果はなく、CPAP群で有意な効果を認めた。これらより、OSAの血圧上昇をきたす機序として、間欠的な低酸素が主要な影響は与えていない可能性を示唆していること、別の視点では、ある特定の症例において、酸素投与が血圧への効果を示すかという点において興味深い研究であったが、今回の研究内では、それらを明らかにすることはできなかった。今後は、OSAが高血圧をきたす機序の解明、またCPAP以外の治療法で血圧や心血管系イベントの改善効果が明らかになることを期待する。
引用文献: Gottlieb DJ et al. CPAP versus Oxygen in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med 2014;370:2276-85.
ゆみのコメント:
心血管系疾患またはそのリスクをもつ患者は、OSAの日中の眠気などの症状が乏しいことが知られており、その治療となるCPAPコンプライアンスが不良となることがみられる。また、OSAが高血圧や心血管系疾患のリスクとなる要因として、その病態にある間欠的低酸素が重要な因子となっている可能性がある。これらより、CPAP以外の治療、特に夜間酸素投与が、OSA自体の改善、および血圧や心血管系疾患へも効果があれば臨床上重要な意義があると考えられた。本研究では、この点に介入し、心血管系リスクをもつOSAに対して、CPAP治療と酸素治療の血圧への比較検討を行った。結果として、酸素投与はコントロール群と比較して、血圧への効果はなく、CPAP群で有意な効果を認めた。これらより、OSAの血圧上昇をきたす機序として、間欠的な低酸素が主要な影響は与えていない可能性を示唆していること、別の視点では、ある特定の症例において、酸素投与が血圧への効果を示すかという点において興味深い研究であったが、今回の研究内では、それらを明らかにすることはできなかった。今後は、OSAが高血圧をきたす機序の解明、またCPAP以外の治療法で血圧や心血管系イベントの改善効果が明らかになることを期待する。
引用文献: Gottlieb DJ et al. CPAP versus Oxygen in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med 2014;370:2276-85.
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2015年6月 1日 月曜日
急性心不全の退院後死亡リスクと無呼吸症の関係
急性心不全は退院後の予後不良な疾患である。それに関わる因子のひとつが睡眠中の無呼吸かもしれない。Khayat Rらは、収縮機能障害をもつ急性心不全患者の退院前に睡眠検査を行い、退院後の予後に無呼吸症が関係するかどうかを検討した。入院中の1117人に睡眠検査を行い、47%がいびきを伴う閉塞性、31%が中枢性の睡眠時無呼吸症を認めた。1096人が退院可能となり、その後の予後を前向きに観察した。退院前の検査にて、閉塞性または中枢性の無呼吸症をもつ患者は、それらをもたない人に比べると、早期の死亡と関連性を認め、それは様々な交絡因子を除外したうえでも、独立して予後不良な因子であった。
ゆみのコメント:急性心不全患者の退院後死亡に睡眠時無呼吸症が独立して関連したことを報告した研究である。 我々も以前に、安定した心不全患者において睡眠時無呼吸症の存在が、死亡イベントに関わることを報告している(Yumino D et al. Relationship between sleep apnoea and mortality in patients with ischaemic heart failure. Heart 2009;95:819-24)。 本研究を含め、これらの関連性を示唆する報告があるものの、いまだ心不全の病態と睡眠時無呼吸症の因果関係が明らかではない。心不全が悪い人が、睡眠時無呼吸症の病態を起こしやすいか、また睡眠時無呼吸症の病態自体が心不全を悪化させ、予後を悪くするかは、明確ではない。このため、無呼吸症への治療介入、可能であれば、陽圧呼吸療法ではなく、心臓自体への影響を与えない無呼吸症への直接的な治療、により心不全の予後が改善するかどうかの検討が待たれる。
引用文献:Khayat R et al. Sleep disordered breathing and post-discharge mortality in patients with acute heart failure. Eur Heart J 2015 (in press)
ゆみのコメント:急性心不全患者の退院後死亡に睡眠時無呼吸症が独立して関連したことを報告した研究である。 我々も以前に、安定した心不全患者において睡眠時無呼吸症の存在が、死亡イベントに関わることを報告している(Yumino D et al. Relationship between sleep apnoea and mortality in patients with ischaemic heart failure. Heart 2009;95:819-24)。 本研究を含め、これらの関連性を示唆する報告があるものの、いまだ心不全の病態と睡眠時無呼吸症の因果関係が明らかではない。心不全が悪い人が、睡眠時無呼吸症の病態を起こしやすいか、また睡眠時無呼吸症の病態自体が心不全を悪化させ、予後を悪くするかは、明確ではない。このため、無呼吸症への治療介入、可能であれば、陽圧呼吸療法ではなく、心臓自体への影響を与えない無呼吸症への直接的な治療、により心不全の予後が改善するかどうかの検討が待たれる。
引用文献:Khayat R et al. Sleep disordered breathing and post-discharge mortality in patients with acute heart failure. Eur Heart J 2015 (in press)
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