院長ブログ
2015年7月13日 月曜日
心房細動患者の脳梗塞発症における睡眠時無呼吸の影響
心房細動患者における脳梗塞発症のリスクに、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)が影響するかどうかはいまだ明らかではない。Yaranovらは、睡眠検査を行った心房細動患者を観察し、脳梗塞の発症率をOSAの有無で検討した。心房細動患者における脳梗塞の発症率はOSA群で有意に高かった(25.4% vs 8.2%, p = 0.006)。また交絡因子を除外したとしてもOSAは脳梗塞の独立した因子となった。
ゆみのコメント:
心房細動患者における脳梗塞発症のリスク因子は、CHADS2スコアに代表されるように、年齢、糖尿病、心不全の合併などがあるが、本研究は夜間の睡眠中の無呼吸がそのリスクの一端をなしうる可能性を示唆する結果となった。心房細動症例には、積極的な睡眠中の無呼吸症のチェックを行い、脳梗塞リスクのひとつと考えた積極的治療介入を検討したほうが良いと考える。また、すでにCPAP治療介入を行っている心房細動合併症例においても、脳梗塞発症の可能性も考え、CPAP治療継続への患者教育のひとつの根拠となりえる研究報告である。
引用文献: Yaranov DM et al. Effect of obstructive sleep apnea on frequency of stroke in patients with atrial fibrillation.
ゆみのコメント:
心房細動患者における脳梗塞発症のリスク因子は、CHADS2スコアに代表されるように、年齢、糖尿病、心不全の合併などがあるが、本研究は夜間の睡眠中の無呼吸がそのリスクの一端をなしうる可能性を示唆する結果となった。心房細動症例には、積極的な睡眠中の無呼吸症のチェックを行い、脳梗塞リスクのひとつと考えた積極的治療介入を検討したほうが良いと考える。また、すでにCPAP治療介入を行っている心房細動合併症例においても、脳梗塞発症の可能性も考え、CPAP治療継続への患者教育のひとつの根拠となりえる研究報告である。
引用文献: Yaranov DM et al. Effect of obstructive sleep apnea on frequency of stroke in patients with atrial fibrillation.
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2015年6月15日 月曜日
閉塞性睡眠時無呼吸へのCPAP vs. O2の血圧への効果
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、高血圧、炎症及び心血管リスクの増大に関連する。間欠性低酸素血症が、睡眠時無呼吸の心血管系疾患発症の根底にある可能性がある。このため、Gottliebらは、心血管疾患リスクをもったOSA患者への治療として、夜間CPAPと夜間酸素療法の血圧への比較検討を行った。318人のAHI15-50回/時間の心血管系疾患リスクをもつ症例を対象とし、コントロール群、CPAP群と夜間酸素療法群の3群に無作為割付を行い、12週間後の血圧変化を観察した。コントロール群と比較して、夜間低酸素の是正は、CPAP群および酸素投与群の両群とも改善しており、両治療機器の夜間使用時間は、CPAPで3.5時間、酸素投与で4.8時間と酸素投与群で有意に長かった。 結果として、血圧に関して、夜間酸素投与群はコントロール群と著変なかったが、CPAP群はコントロール群や夜間酸素投与群と比較し、収縮期血圧2-3mmHgと有意な血圧低下を認めた。
ゆみのコメント:
心血管系疾患またはそのリスクをもつ患者は、OSAの日中の眠気などの症状が乏しいことが知られており、その治療となるCPAPコンプライアンスが不良となることがみられる。また、OSAが高血圧や心血管系疾患のリスクとなる要因として、その病態にある間欠的低酸素が重要な因子となっている可能性がある。これらより、CPAP以外の治療、特に夜間酸素投与が、OSA自体の改善、および血圧や心血管系疾患へも効果があれば臨床上重要な意義があると考えられた。本研究では、この点に介入し、心血管系リスクをもつOSAに対して、CPAP治療と酸素治療の血圧への比較検討を行った。結果として、酸素投与はコントロール群と比較して、血圧への効果はなく、CPAP群で有意な効果を認めた。これらより、OSAの血圧上昇をきたす機序として、間欠的な低酸素が主要な影響は与えていない可能性を示唆していること、別の視点では、ある特定の症例において、酸素投与が血圧への効果を示すかという点において興味深い研究であったが、今回の研究内では、それらを明らかにすることはできなかった。今後は、OSAが高血圧をきたす機序の解明、またCPAP以外の治療法で血圧や心血管系イベントの改善効果が明らかになることを期待する。
引用文献: Gottlieb DJ et al. CPAP versus Oxygen in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med 2014;370:2276-85.
ゆみのコメント:
心血管系疾患またはそのリスクをもつ患者は、OSAの日中の眠気などの症状が乏しいことが知られており、その治療となるCPAPコンプライアンスが不良となることがみられる。また、OSAが高血圧や心血管系疾患のリスクとなる要因として、その病態にある間欠的低酸素が重要な因子となっている可能性がある。これらより、CPAP以外の治療、特に夜間酸素投与が、OSA自体の改善、および血圧や心血管系疾患へも効果があれば臨床上重要な意義があると考えられた。本研究では、この点に介入し、心血管系リスクをもつOSAに対して、CPAP治療と酸素治療の血圧への比較検討を行った。結果として、酸素投与はコントロール群と比較して、血圧への効果はなく、CPAP群で有意な効果を認めた。これらより、OSAの血圧上昇をきたす機序として、間欠的な低酸素が主要な影響は与えていない可能性を示唆していること、別の視点では、ある特定の症例において、酸素投与が血圧への効果を示すかという点において興味深い研究であったが、今回の研究内では、それらを明らかにすることはできなかった。今後は、OSAが高血圧をきたす機序の解明、またCPAP以外の治療法で血圧や心血管系イベントの改善効果が明らかになることを期待する。
引用文献: Gottlieb DJ et al. CPAP versus Oxygen in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med 2014;370:2276-85.
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2015年6月 1日 月曜日
急性心不全の退院後死亡リスクと無呼吸症の関係
急性心不全は退院後の予後不良な疾患である。それに関わる因子のひとつが睡眠中の無呼吸かもしれない。Khayat Rらは、収縮機能障害をもつ急性心不全患者の退院前に睡眠検査を行い、退院後の予後に無呼吸症が関係するかどうかを検討した。入院中の1117人に睡眠検査を行い、47%がいびきを伴う閉塞性、31%が中枢性の睡眠時無呼吸症を認めた。1096人が退院可能となり、その後の予後を前向きに観察した。退院前の検査にて、閉塞性または中枢性の無呼吸症をもつ患者は、それらをもたない人に比べると、早期の死亡と関連性を認め、それは様々な交絡因子を除外したうえでも、独立して予後不良な因子であった。
ゆみのコメント:急性心不全患者の退院後死亡に睡眠時無呼吸症が独立して関連したことを報告した研究である。 我々も以前に、安定した心不全患者において睡眠時無呼吸症の存在が、死亡イベントに関わることを報告している(Yumino D et al. Relationship between sleep apnoea and mortality in patients with ischaemic heart failure. Heart 2009;95:819-24)。 本研究を含め、これらの関連性を示唆する報告があるものの、いまだ心不全の病態と睡眠時無呼吸症の因果関係が明らかではない。心不全が悪い人が、睡眠時無呼吸症の病態を起こしやすいか、また睡眠時無呼吸症の病態自体が心不全を悪化させ、予後を悪くするかは、明確ではない。このため、無呼吸症への治療介入、可能であれば、陽圧呼吸療法ではなく、心臓自体への影響を与えない無呼吸症への直接的な治療、により心不全の予後が改善するかどうかの検討が待たれる。
引用文献:Khayat R et al. Sleep disordered breathing and post-discharge mortality in patients with acute heart failure. Eur Heart J 2015 (in press)
ゆみのコメント:急性心不全患者の退院後死亡に睡眠時無呼吸症が独立して関連したことを報告した研究である。 我々も以前に、安定した心不全患者において睡眠時無呼吸症の存在が、死亡イベントに関わることを報告している(Yumino D et al. Relationship between sleep apnoea and mortality in patients with ischaemic heart failure. Heart 2009;95:819-24)。 本研究を含め、これらの関連性を示唆する報告があるものの、いまだ心不全の病態と睡眠時無呼吸症の因果関係が明らかではない。心不全が悪い人が、睡眠時無呼吸症の病態を起こしやすいか、また睡眠時無呼吸症の病態自体が心不全を悪化させ、予後を悪くするかは、明確ではない。このため、無呼吸症への治療介入、可能であれば、陽圧呼吸療法ではなく、心臓自体への影響を与えない無呼吸症への直接的な治療、により心不全の予後が改善するかどうかの検討が待たれる。
引用文献:Khayat R et al. Sleep disordered breathing and post-discharge mortality in patients with acute heart failure. Eur Heart J 2015 (in press)
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2015年5月25日 月曜日
冠動脈バイパス術後の予後と閉塞性睡眠時無呼吸症
閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は心血管系イベントと関連している。Uchoa CHらは、冠動脈バイパス(CABG)後の患者において、OSAが脳心血管イベントに及ぼす影響を検討した。CABGが予定されている67人の患者に、術前検査として終夜睡眠検査を行い、一時間あたりの無呼吸低呼吸回数(AHI)が15回以上のOSA患者は56%であった。脳心血管イベントに関して、OSAの有無で、1ヶ月以内では有意差がなかったが、長期観察では、脳心血管イベント、血行再建術の追加治療、狭心症や心房細動の出現はOSA群でより多くみられた。また多変量解析において、OSAの存在は冠動脈バイパス術後の独立した予後不良因子であった。
ゆみのコメント: 虚血性心疾患により冠動脈バイパス術が必要になった患者において、OSAの存在が独立した予後不良因子であったことを統計学的に示した論文である。 以前にわたしたちは、心筋梗塞で冠動脈ステント留置術を行った患者においてOSAの存在は、その後の心血管イベントが多いことを示している(Yumino D et al. Impact of obstructive sleep apnea on clinical and angiographic outcomes following percutaneous coronary intervention in patients with acute coronary syndrome. Am J Cardiol. 2007;99:26-30)。このように、すでに狭心症や心筋梗塞を起こしたあとの患者においても、OSAをもつことは、さらに次のイベントを起こす可能性がある。このため、医療に携わる我々は、まずは夜間の無呼吸の有無をみるスクリーニング検査を行う意識をもち、二次予防を考慮する必要がある。
引用文献:Uchôa CH et al. Impact of OSA on Cardiovascular Events After Coronary Artery Bypass Surgery. Chest 2015;147:1352-60.
ゆみのコメント: 虚血性心疾患により冠動脈バイパス術が必要になった患者において、OSAの存在が独立した予後不良因子であったことを統計学的に示した論文である。 以前にわたしたちは、心筋梗塞で冠動脈ステント留置術を行った患者においてOSAの存在は、その後の心血管イベントが多いことを示している(Yumino D et al. Impact of obstructive sleep apnea on clinical and angiographic outcomes following percutaneous coronary intervention in patients with acute coronary syndrome. Am J Cardiol. 2007;99:26-30)。このように、すでに狭心症や心筋梗塞を起こしたあとの患者においても、OSAをもつことは、さらに次のイベントを起こす可能性がある。このため、医療に携わる我々は、まずは夜間の無呼吸の有無をみるスクリーニング検査を行う意識をもち、二次予防を考慮する必要がある。
引用文献:Uchôa CH et al. Impact of OSA on Cardiovascular Events After Coronary Artery Bypass Surgery. Chest 2015;147:1352-60.
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2015年5月18日 月曜日
閉塞性睡眠時無呼吸症への上気道刺激の効果
閉塞性睡眠時無呼吸症への持続陽圧呼吸療法(CPAP)は使用継続不良な患者が問題となる。Strolllo PJらは、上気道への電気刺激により睡眠中の無呼吸を治療する新しいデバイスを用いて、12ヶ月間の上気道刺激治療を行い、安全性と効果を検討した。126人に外科的に上気道開大筋を支配する神経へリードを留置し、ペースメーカーデバイスは前胸部へ留置を行った。安全性について、重度の合併症は2%未満であった。同治療を12ヶ月間の継続使用により、1時間あたりの無呼吸低呼吸指数(AHI)は29から9へ減少した。またそれに伴い、日中の眠気や睡眠の質の改善を認めた。
ゆみのコメント:
中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症患者において、CPAP治療の継続率は6ヶ月で約70-80%が現状である。 この中でCPAP離脱症例への有効な治療方法がないのが現状である。最近、欧米において、上気道開大筋群を支配する舌下神経へのペースメーカーリードを用いた電気刺激を行い、睡眠中の上気道閉塞による無呼吸を抑える新しい治療方法の臨床試験が行われている。本研究では、多施設の良好な試験デザインにて、その安全性と有効性を示したはじめての報告となった。本邦でもCPAP以外の無呼吸症治療を望む患者が多くいる。本治療方法は外科的な方法を必要とするが安全性が示されるのであれば、本邦でも使用可能なときがくることが望まれる。
引用文: Strollo PJ Jr et al. Upper-airway stimulation for obstructive sleep apnea. N Engl J Med. 2014;370:139-49.
ゆみのコメント:
中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症患者において、CPAP治療の継続率は6ヶ月で約70-80%が現状である。 この中でCPAP離脱症例への有効な治療方法がないのが現状である。最近、欧米において、上気道開大筋群を支配する舌下神経へのペースメーカーリードを用いた電気刺激を行い、睡眠中の上気道閉塞による無呼吸を抑える新しい治療方法の臨床試験が行われている。本研究では、多施設の良好な試験デザインにて、その安全性と有効性を示したはじめての報告となった。本邦でもCPAP以外の無呼吸症治療を望む患者が多くいる。本治療方法は外科的な方法を必要とするが安全性が示されるのであれば、本邦でも使用可能なときがくることが望まれる。
引用文: Strollo PJ Jr et al. Upper-airway stimulation for obstructive sleep apnea. N Engl J Med. 2014;370:139-49.
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